オーガニックなワインはなぜ、こんなにも美味しい?

<注釈>
※農薬や化学肥料を使わずに育てたブドウを原料にし、醸造段階においても自然な製法にこだわったワインのことを一般的には「ヴァン・ナチュール」と呼びますが、この記事では広義で「オーガニックなワイン」、「自然派ワイン」と呼んでいます。

中目黒 THE WINE STOREに聞く「オーガニックなワインはなぜ美味しい?」

初めて自然派ワインを口にしたとき、「このまろやかさって何なんだろう?」と、衝撃を受けたのを覚えています。実は一般的なワインも好きなのですが、オーガニック系のものはまったく別ジャンルの味わい。ブドウのフレッシュさが生きているのにベールを纏ったように柔らかで、口に含むと全身が緩んでいくような……包容力と優しさに溢れています。

そんな“口福の自然派ワイン”に出合いたいとき、私が足を運ぶのは中目黒にあるTHE WINE STORE。ずらりと並ぶ約450種のワインはエチケットも美しく、作り手の人柄がボトルから滲み出ているよう! オーナーの横川かおりさんは、ビジネスを超え、ワイン作りを“生き方”として選んでいる醸造家のものを扱っているのだと言います。

「一般的に市場に出回っているワインの多くは、ゴールとなるテイストがワイナリーによって決められていて、そこにたどり着くように技術を駆使し、安定した味を生み出しています。一方、自然派ワインは、野生の酵母をいかし、ブドウそのものの力を尊重するために、人の介入を極力抑えています。作り手が仕上がりをコントロールすることもないので、味わいも毎年同じではありません。でもそのぶん、その年、その土地でしか生まれ得ない個性が際立ったワインができ上がります」(横川さん)


店舗の奥にはワインを試飲できるスペースも。写っているのが 横川かおりさん。

野生の酵母が“予測不能な美味しさ”を生み出してくれる

人が作り出す“予定調和”を超えた自然の創造物だから、特別な味わいが生まれるんだと思うと、さらに自然派ワインが愛おしく感じられます。それは、予期せず目にした夕焼けに誰もが思わずうっとりしてしまうように、人間の本能に訴えかける“吸引力”のようなものかもしれません。

「ちなみに、自然派ワインの風味が柔らかいのは、酸化防止剤の使用量が少ないのも理由のひとつ。酸化防止剤となる亜硫酸塩と同じ物質は、実は醸造段階で自然に発生するもの。ごく少量であれば一概に悪いとは言えないのですが、たくさん添加すると人体に悪影響を及ぼしますし、ワインの中の酵母菌が死んでしまいます。酵母は、いきいきとした味わいや複雑な旨みを与えてくれる要素のひとつであり、ボトルの中で生き続けていることがとても大切なんです」(横川さん)。

THE WINE STOREセレクト
物語を感じるオーガニックなワイン 3選

酵母の息遣いに思いを馳せながら楽しみたい、THE WINE STOREおすすめの3本がこちら。いずれもブドウと土地柄、醸造家の個性が伸び伸びと表れています。

カンティーナ ジャルディーノ


ヴィーノ ビアンコ フリッザンテ 2015 泡 (イタリア)
750ml 4,400円

「まるでアーティストのような個性豊かな6人の共同経営者によるワイナリーのもの。志の高い農家から適正な価格でブドウを買い付け、自社では基本的に醸造のみを行なっています。横行しているブドウの不当な買い叩きに警鐘を鳴らしつつ、さまざまなブドウで試行錯誤を行なっている点も共感できる」(横川さん)
醗酵過程にあるワインを瓶につめることで生まれる、ごく微細な泡立ちが舌を心地よく刺激してくれます。ベースには程よい苦味をたたえていますが、空気に触れるほど後味がマイルドに。

ジェラール シュレール エ フィス


ピノ グリ レゼルヴ 2011 白 (フランス)
750ml 5,100円

「1958年創業のアルザス地方のワイナリー発。現在は2代目が、誠意と愛情あふれる先代の仕事を受け継いでいます。醸造においては、彼が幼い頃から培ってきたセンスと自由な発想で進化を続けている」(横川さん)
こちらはスティルワインですが、ほんの少しだけ発砲するタイプ。フレッシュなブドウをかじった瞬間のようにフルーティーですが、残糖度は低いためキリリと淡麗。酸味が強めで、溌剌とした味わいを楽しめます。

ヴィーノ アンビズ


ラ ガッタ モルミリアーナ 2010 赤(スペイン)
750ml 3,900円

「たまたま手に入れた農地にブドウ畑もあったため、誰の手ほどきも受けずにそのケアをはじめ、自らの感性でワイン作りをするようになったファビオ・バルトロメイ氏による1本。まだお会いしたことはないのですが、インポーターさんからの“規格外”なお話と届いたワインの楽しさ、美味しさに彼の人柄への妄想が膨み、生き方そのものに興味津々です」(横川さん)
古代ギリシャの時代から栽培されてきた黒ブドウ(テンプラニーリョ)を使用。チョコレートのような風味と中東のスパイスのようなテイストが共存した、プリミティブにしてモダンな1本です。

横川さんのおすすめは、1本の自然派ワインを数日かけて楽しむこと。酵母が生きているため、空気に触れて時間が経つにつれ、開栓時とはまた違うさまざまな表情を楽しめるのだとか!

THE WINE STORE
http://thewinestore.jp
東京都目黒区中目黒3−5−2
Tel: 03-6451-2218
営15:00~21:00 土日祝13:00~19:00
不定休

PHOTO:FUMIAKI ISHIWATA